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文部科学省が示す希望者を募っての色覚検査の事後措置はどのようなものか?
児童生徒等の健康診断に係る改正規定等については平成28年4月1日としたこと。

色覚の検査について

学校における色覚の検査については,平成15年度より児童生徒等の健康診断の必須項目から削除し,希望者に対して個別に実施するものとしたところであるが,児童生徒等が自身の色覚の特性を知らないまま卒業を迎え,就職に当たって初めて色覚による就業規制に直面するという実態の報告や,保護者等に対して色覚異常及び色覚の検査に関する基本的事項についての周知が十分に行われていないのではないかという指摘もある。

このため,平成14年3月29日付け13文科ス第489号の趣旨を十分に踏まえ,1.学校医による健康相談において,児童生徒や保護者の事前の同意を得て個別に検査,指導を行うなど,必要に応じ,適切な対応ができる体制を整えること,2.教職員が,色覚異常に関する正確な知識を持ち,学習指導,生徒指導,進路指導等において,色覚異常について配慮を行うとともに,適切な指導を行うよう取り計らうこと等を推進すること。特に,児童生徒等が自身の色覚の特性を知らないまま不利益を受けることのないよう,保健調査に色覚に関する項目を新たに追加するなど,より積極的に保護者等への周知を図る必要があること。

1958年学校保健法公布以来、人権問題そのものである色覚検査が学校保健の中で無造作に施行されてきたが、また繰り返されそうである。

2003年に定期健康診断から色覚検査を削除した理由は次の5項目であった。

1)色覚異常の正確な判定は中学生以上でも出来ない場合がある。
2)程度区分に一貫性がない。
3)教育面での支障の内容が明確でない。
4)検査の結果が児童の将来に好ましくない影響を及ぼす。
5)色覚検査を廃止した場合に危惧される教育上の問題は教師が色覚異常に関わる正確な知識を持ち正しく対応できるようにすれば解決できるということ

遺伝検査と同等の色覚検査には遺伝カウンセリングが必要である。
全国的に石原色覚異常検査表IIコンサイス版でスクリーニングするよう文科省ではなく、眼科医会から教育委員会を通じて指示が出ている
私共の調査研究の結果、石原表で は色彩識別能は判定できないことが判った。

全国的にはスクリーニングの結果、異常 の疑いと言われるだけで、アノマロスコープによる診断を受けた者は僅かであった。眼科学校医不在の地区もあった。職業適性検査法はない。色覚検査は人権問題である。特に半数居る女子の色覚検査は 大きな社会問題である。

文科省からの通知後の現状

日本社会の色覚に関わる誤謬から、大学入学差別、 就職差別が生じ、大きな人権問題となった。
更に遺伝子の問題が絡み、該当する児童 生徒は将来にわたって大変苦しむことになり、その経験をしてきた団体からは、色覚 検査が必要ならば自ら検査を希望して眼科専門医の検査を受けるのが良いので、学校での健康診断による 検査はやめるようにとの要望が出ている。

色覚検査は希望者が詳細なインフォームド ・コンセントのもと、個別に専門医により受けるべきもので、現在指示されているような希望者を募って、学校で石原表による検査だけで、事後措置がない検査はするべきではない。
文部科学省は日本眼科医会から、検査の内容の説明を詳細に聞き、文部科学省として学校側に事後措置を具体的に示すべきである。全国の養護 教諭は大変困惑している。

色覚検査における遺伝カウンセリングについて

石原表で「異常の疑い」とあいまいなまま、検者も被験者も「色弱」と思いこんできたのが現状である。
色覚特性は確実に遺伝するものであるから、遺伝カウンセリングは必須であるが、遺伝カウンセリングのできる機関はほぼゼロに等しい。

臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医制度)

①遺伝医学についての広範な専門知識を持っている
②遺伝医療関連分野の特定領域について、専門的検査・診断・治療を行うことが出来る
③遺伝カウンセリングを行うことが出来る
④遺伝学的検査について充分な知識と経験を有している
⑤遺伝医学研究の業績を有しており、遺伝医学教育を行うことが出来る

遺伝カウンセリング

遺伝カウンセリングは、疾患の遺伝関与について、その 医学的影響、心理学的影響及び家族への影響を人々が理解し、それに適応して行くことを助けるプロセスである。
1)疾患の発生及び再発の可能性を評価するための家族歴および病歴の解釈
2)遺伝現象、検査、マネージメント、予防、資源及び研究についての教育
3)インフォームドチョイス(充分な情報を得た上での自律的 選択)、およびリスクや状況への適応を促進するための カウンセリング、などが含まれる。
  検査をして何を知りたいのか、結果を知ってどうしたいのかを自身の気持ちに向き合った上で、互いの認識を共有し、今後どのような姿勢で向き合って行くのかを話し合い、意思決定するプロセスが重要となる。

色覚検査をするにあたってはこれだけの認識が必要です。