学校における色覚検査について

学校における色覚検査は不必要です。

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学校におけるすべての検査について、施行するものはその目的、内容を十分把握していなければならないし、被験者に結果を説明し、必要ならば詳細な注意をしなければなりません。色覚検査についてその自信はあるでしょうか。
色覚、味覚、嗅覚など五感について自らの感覚を知る必要がありますが、学校がするものではなく、たまたま石原表があるため昭和33年頃の文部省が研究者と学校保健を利用して始めたことです。
学校では保護者も、本人も教員も色覚について知りたいことは子供はどのような色で困っているかということです。従来の検査ではこれは全く分かりませんでした。先天的な異常だと告げるだけでした。

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色覚は人間の持っている多くの感覚の中の一つで、しかも唯一、一生変わらず、典型的な遺伝形式をとるものです。
また色の見え方は実に様々で、検査による見え方から想像出来ない見え方をしています。したがって、検査結果から将来の職業適性は推定できません。
それなのに学校では色覚検査により職業適性予測が可能と思われて子どもたちの夢を潰してきました。この過ちを学校保健が犯してきたのです。

日本における色覚問題の現状は

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従来の検査表は何時でも何処でも誰でも使えたことでした。遺伝子検査と同じ重みがあるのに、安易に養護教諭が使っていました。本来は検診ではなく、個人的に医師が行うものです。
養護教諭は検査後のフォローが大切です。

色覚異常に関する憶測によるバリアがあります。

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まず石原式色覚異常検査表は何時でもある検査表で手軽に使われ、人々を差別してきました。 次に医師はパネルD15テストがあれば使います。これは型別・程度検査法で、現在警察官、自衛官はこれを合否の基準にしています。
最後にアノマロスコープテストですが、これは正式な診断機器ですが、僅少の眼科医が所持しているだけですからほとんどの人は正式な診断を受けていないことになります。
それなのに診断名として、色盲・色弱・色覚異常・先天色覚異常などがあり、医学的検証がないまま色盲は運転免許が取れない、医師になれない、薬剤師になると危険だ、色を扱う職業は無理だ、学校の教員には向かないなどなど誤った社会的通念がありました。
色覚異常の疑いと言われても正式な診断をしてくれる眼科医が何処にあるかわからない。診断をしても治るわけではないし、どんなことに注意したらよいかも知らされませんでした。

大学入学許可要件の色覚に関する見直しの歴史について

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高柳が調査した1986年では国立大学の半数が、「成績の如何に関わらず色覚異常者は不合格とする」との人権侵害が堂々と行われてきましたが、その非を訴え続け、年々半減し、5年後にはほぼ改善されました。
2017年現在では国立大学で82大学のうち2大学、私立大学は601大学のうち 1大学のみに制限の記載があります。

遺伝形式について

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女子は「異常」と診断されると結婚話がなくなるのはこの形式の為です。しかし女子の診断は非常に難しいのです。1987年に名古屋大学眼科学教室で行った色覚検査で女子14,520人のうち石原表誤読者は62人でした。そのうちアノマロスコープ診断で異常者と診断されたのは21人でした。しかもほとんどが DAで日常生活に問題がありませんでした。
1995年の学校保健法の一部改正では「修学に支障のない異常は異常とは見なさない」となっています。だから、学校では特に女子の検査は不必要です。
色覚異常者の色の見え方は世界でまだ不明です。
保因者の検出は難しい。
色覚検査は異常者を選出するのみで終わっています。事後措置は皆無でした。身長・体重と同列の検査でした。
色覚検査にはインフォームド・コンセントが必要です。

一般健康診断にふくまれる色覚検査は法的に不要となりました。

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 2001年 厚生労働省は労働安全衛生法改正の折に、雇い入れ時の色覚検査を廃止しました。
 2003年 文部科学省は学校保健法改正の折に定期健康診断から色覚検査を削除しました。
 2004年 国土交通省は船舶職員法改正の折に眼科的色覚検査をすべて廃止し、小型船舶操縦免許取得に際し、灯色識別テスト施行に切り替えました。
 2014年に文部科学省は色覚検査について積極的に通知することとの逆行の指示を出されました。ただし法改正はしていないので、現場で全員に色覚検査をするのは学校保健法違反にあたります。

日本の警察官採用に関わる身体要件の変遷について

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以前は警察官になるためには石原表により色覚正常なことが条件でした。しかし石原表誤読が警察官の職務遂行にどのように関わるのかを調査研究して報告していただきたい旨お願いしてありましたところ、2007年に警察庁の採用係ではあれは間違いであったので、警察官の職務遂行に支障がなければ可とするとの回答があり、以来、年々改善され、2011年には47都道府県警すべての県警において、石原表に誤読があっても、職務遂行に支障がなければ可となり、色覚検査結果は関係なく、現場の能力評価となっています。

教育用色覚検査表CMTについて

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色覚検査がなくなっても、ある色が組み合わさったとき見分けにくい人は男性の2.2%ほどいます。どの色の組み合わせが苦手かを検査する方法がCMTカラーメイトテストです。検査で良い・悪いを識別するのが目的ではなく救済策を考える道具として開発しました。
人間工学会ではユニバーサルデザインとして多様化の中で如何に救済するかの実践であると高く評価されています。
これは色覚異常検査表ではありません。

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例えば、第二表の真ん中の色のなかまが横と答える人は茶色と緑の色が組み合わさったとき見分けにくいので、例えば茶色の方に色以外の手がかりとして斜線を入れるなどして見分けられるようにします。

色覚に関わる指導の資料は厚生労働省、文部省などから発行されています。

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 2001年に厚生労働省から「色覚検査の廃止」のパンフレットが出ました。雇入時の色覚検査廃止です。最近は『みだりに色覚検査をしない』と注意を呼び掛けております。
 2002年に名古屋市教育委員会から「色のバリアフリー」のパンフレットが出ました。緑板に赤チョークは使わないことなどが記されています。
 2003年に文部科学省から色覚に関する指導の資料が出ました。定期健康診断から色覚検査削除が指示されています。

色覚のまとめ

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健康診断は児童生徒の先天異常を見いだす事が目的ではありません。制限を示す以外に事後措置のない従来の色覚検査は当事者にとって何の役にも立たなかったどころか、将来の芽を摘み取ってきたと言う事実があります。人間にはだれしも足りないところを補う代償機能が働きます。色識別能は現場の検査をしてみなければ判りません。
幸い、我が国における強制的な色覚検査はほとんど削除されました。高柳がこの問題に気づいてから40年が経過しました。
検査がなくなっても、色覚特性のものは必ずいます。
今後の課題として警察官、自衛官、JR職員、大型船などには未だにパネルD15による基準が適用されていますが、これらについても、何が支障で制限されるのか、その証拠が示され、先天異常による制限ではなく能力評価が正当にされる様、各方面での評価基準の開発をみんなで期待しましょう。

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